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2010.8.13きく
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復活!星空の映画祭2010

八ヶ岳の麓、長野県諏訪郡原村。
かつてこの地に夏の間だけ、星空の下に開館する映画館があった。

2010年夏、こんな文章から始まる暖かいチラシやポスターを諏訪地域の様々な場所で目にします。「森の中、満天の星空の下で映画を見たい」という想いから1983年に始まった「星空の映画祭」。ピンと張られた大きな大きなスクリーンの前には思い思いの場所に広げられた観客のシートや椅子が並び、昔ながらのフィルム映写機に灯された光は自然の闇の中に様々な物語を映し出してきました。

原村の夏の風物詩として、諏訪のみならず多くの人々に愛されて24年間続いてきた映画祭でしたが、近年の映画を取り巻く環境の変化に個人経営の映画館が大打撃を受け次々と閉館していく中、同様にこのイベントも2006年に終わりを迎えました。

しかし2010年。
星空の映画祭を子供の頃の夏の思い出として「体験」してきた人や、映画を愛する人の呼びかけにより、「もう一度復活させたい」という共通の想いを持つ多くの人が集まり実行委員会が発足。様々な壁を乗り越え8月8日、4年ぶりに原村八ヶ岳自然文化園の野外ステージに張られた巨大スクリーンに「映画」が映し出されました。

今回は実行委員会の中心人物であり、立ち上げ人の一人である武川さん(岡谷出身)にお話をお伺いしました。夕方までの曇り空も徐々に東へと流れ、ところどころに星が見え始めた自然文化園でのインタビューです。

映画祭用映写機

映画祭立ち上げまでの簡単な経緯を教えてください。

去年の秋頃、これまでの映画祭で中心になって活動されていた方を訪ねたのが始まりでした。その時はお家にいらっしゃらなかったので「復活できそうなら全力でお手伝いします」っていう後押しの気持ちを置き手紙に書かせていただいて、そのまま帰ったんですね。

少し間が空くんですが2010年のお正月にもう一度お伺いして、ようやく直接お話ができたと思ったらいつの間にか僕たちが中心になってやることになっていて(笑)「世代交代だよ!君たちならできるよ!成功するよ!」っていう励ましの言葉をもらううちにその気になって(笑)「君たち」といってもその場にいたのは僕と秋山さん(原村在住・発起人)の2人だけだったんですけどね。

星空の映画祭 八ヶ岳自然文化園 野外特設ステージでスクリーンの準備

8月3日。いよいよ会場の準備。スクリーンが取り付けられます。

ではたった2人での立ち上げだったんですね。

そうです。で、まずはやっぱり仲間を集めなければということで、インターネット上のコミュニティサイトなどで「復活を夢見る会」という準備ための組織を作りました。とても反響があって沢山の方から応援やアドバイスを頂いたんですが、ありがたい反面逆にそれがプレッシャーにもなったりして本当に開催できるのか、ちょっと不安になりましたね。

星空の映画祭 スクリーン上の実行委員長 秋山さん、武川さん

スクリーンが設置され、その大きさを全身で表す武川さん(左)と秋山さん(右)

上映作品はいつごろ決まったのでしょうか。

1月頃から話を初めて3月、4月とああでもないこうでもないと時間をかけて決めていきましたね。というのも、僕らの頭の中にあった「復活」っていうのは一度限りの開催ではなくて来年もその次もずっと続いてくっていうものでした。ですから復活第一回目になる今回はなんとしても成功させなければいけない。そういった想いと、もう一つはやはり予算の問題からとにかく慎重になって作品を選ばなければならないという理由がありました。

今映画祭のスタッフとして活動されているメンバーの皆さんについて教えてください。

上映作品が決まって開催日程なども詰まってきた頃から「手伝わせてください!」という声が沢山寄せられるようになりました。復活第一回目ということで、当然お金もほとんど無い中での開催になります。ですので完全ボランティアの形になってしまうのですがそれでも十数人のスタッフの皆さんが準備から開催中の今も手伝ってくれています。また、会場や設備、スタッフなどのご協力をいただいている八ヶ岳自然文化園さんにも共催という形で一緒に映画祭作りをさせていただいています。

星空の映画祭 スタッフ

会場設営に参加したスタッフのみなさん

初日から間もなく会期の折り返しを迎えますが、実際にお客さんと接してみて反応はどうでしょうか?

なによりも「復活してくれて嬉しい」「素敵な企画をありがとう」「待ってたよ」と皆さんに言ってもらえることが本当に嬉しいです。今回初めてこの映画祭を訪れてもらえたお客さんからの応援の言葉もとても嬉しく感じますし、だからこそ、残りの半分もいい映画祭になるようできることはすべてやって、「来年へ」繋げていければと思っています。

初日の上映作品は『アバター』。沢山の観客に囲まれて星空の映画祭が帰ってきました。

武川さんは東京の映画館に勤務されているということですが、今現在の映画について何か考えていることはありますか?

僕は普段業界の中で映画と接しているのですが、作品そのものよりも「映画を見る」という行為の変化に最近は違和感のようなものを感じています。冷房がしっかり効いていなければいけない、なんとなくおしゃれで奇麗な室内でなければいけない、など、本来映画という「作品」を見る為のハコである場所がホテルのように、サービスそのものになってしまっているように思います。

設備という面では、どんなに面白い作品を用意しても、どんなに映画を作品として大切に考えても、従来の映画館では予算や施設の規模上どうしようもできないという状況にあります。

初日の挨拶に立つ秋山さん(左)と武川さん(右)。会場からは拍手が贈られます。

それは個人経営の映画館が次々と閉館されていく理由の一つでもあるのでしょうか。

それもあると思います。本来作品を見せる為の場所が変質してしまっている。それとですね、最近は映画をスクリーンに投影する映写機も最近になってアナログフィルムから完全デジタルへ移行するようになっています。確かにデジタルだと従来のフィルムのより扱いは簡単ですし、現像コストもかかりません。ですが、そのデジタル映写機自体を導入するには数千万円というコストがかかってしまいます。

こういった大きな変化に対応する事は、次々と新しくできていく複合型の映画施設などでは簡単に対応できるのかもしれませんが、長年映画作品を上映してきた小さな映画館にとってはかなり難しい問題です。配給自体がデジタル化していく中、アナログでやっていく映画館にとっては深刻な問題なんです。

この星空の映画祭はその流れとは真逆のスタイルだと思うのですが。

それが僕がこの映画祭に感じる最大の魅力なんです。場所は真っ暗な森の中、夏といっても冷え込む日もあり、屋外ですので当然蚊なども寄って来てしまいます。ですが、本来映画が持っている「見る人の人生における一つの異物」っていう側面の中で、本当に映画を「作品」として楽しめる環境としてはこの映画祭はすばらしいものだと感じています。

寒くなったら厚着をすればいい。虫も対策できる。一人で、または親子やカップルで毛布にくるまって満天の星空の下で「作品」としての映画と対峙できる。僕はこの映画祭はただの「屋外上映」ではなくて、「映画を見る」っていうことをもう一度考えさせてくれる、もう一度体験させてくれるイベントだと思っています。

茅野新星劇場柏原さんの手によって4年ぶりに動き出した映写機

それでは、残り1週間ではありますが、諏訪の皆さんにひとことお願いします。

夜遅くにわざわざ屋外で映画?と思われる方もいらっしゃるかと思います。何度も繰り返してしまいますが、「それがいいんです」。そう何度も体験できないイベントとして、また長野の夏ならではの思い出として、練りに練った4つの作品とこの映画祭を本当に好きなスタッフでお待ちしています。是非お気軽にお越し下さい。


映画の上映終了後、観客から自然と拍手が起こる光景。
最近映画館で目にすることが少なくなってきたように思いませんか?

この映画祭では連日、上映終了後に拍手が聞こえるそうです。
それはこの映画祭に向けた拍手、まわりの自然と星空に向けた拍手、
そしてなにより作品への純粋な感動のあらわれなのかもしれません。

第25回 星空の映画祭

【開催期間】 2010年8月8日(日)~8月22日(日)
【上映時間】 連日20:00スタート ※小雨決行
【会場】 八ヶ岳自然文化園(〒391-0115 長野県諏訪郡原村17217-1613)
【上映作品】『アバター』『夏時間の庭』『ザ・ムーン』『ガマの油』
【上映スケジュール】星空の映画祭公式サイトでご確認下さい
【当日券】おとな1,000円 こども500円
【ウェブサイト】星空の映画祭公式サイト

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