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2013.12.8ナガッタ
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毎日の暮らしに溶け込む、ガラスのお店 wawa

 

SWASH.jpものづくりCH。お久しぶりの更新となりました!

今回お話を伺ったのは、下諏訪でステンドグラスの工房とお店「wawa」を営む伊東彩さん。今日はどんなお話が聞けるのでしょうか。レインボーとナガッタの2人でおじゃましてきましたよ!

 

ステンドグラス用のガラスがディスプレイされた入り口。

御田町商店街の一角、「wawa」の大きな窓からはやわらかな明かりがのぞいています。お店の中に一歩足を踏み入れると、とてもゆるやかな時間が流れているようでのびのびした気分に。オーナー兼作家の伊東彩さんが笑顔で出迎えてくれました。

壁に飾られている結婚式のウェルカムボードや壁飾り、ランプ、キャンドルホルダーやアクセサリー…どれもこれまでに見たことのないような独創的なステンドグラスばかりです。

鏡や壁飾り、ストラップなどが心地よい空間に並んでいます。

 

—あまり見かけないタイプのステンドグラスだと思うのですが…

「ステンドグラスの技法ですけど、よくイメージする教会のステンドグラスとか調度品という感じのものとは違いますよね。私は学校などで学んだのでははなくて、実家の近くでたまたまステンドグラスをやっている方がいて、そこで基本的な技法を教えてもらいましたが、デザインなどは自己流です。当時、一緒に習っている方はやはりランプや建具などを作る方が多かったですが、私はもっともっと身近で、雑貨っぽいものを作りたかったんです。」

光の粒でできているようなランプ。

「イタリアに短期留学をしたんですが、あちらの教会のステンドグラスって本当にすばらしくって…でもそういうステンドグラスが作りたいかって言ったら、そうではないことに気がついて。綺麗なんですけど自分の部屋に置くかといったら置かないかなあ、と。自分の部屋に置いてもいいような、雑貨としてのステンドグラスを作りたかったんです。使っている色が少ないね、とか色味が地味だね、とか言われるんですが、他人が作っていないものを作れたらいいな、と思っています。」

こちらの壁飾りは、ステンドグラスの円のひとつが鏡になっています。

「たとえば女性だと、玄関などで家を出る前に鏡でチェックしたいというの、ありますよね。でも玄関先に鏡をぼーんと置くのは抵抗があるので、ちょっとインテリアとして成立していて、なおかつチェックも出来る、という。そういう感じです。」

伊東さんが普段使っている道具類。使い込まれて、どれもしっくりと手に馴染むようになっています。

「ステンドグラスはハンダでガラスをつなげていく技法なんですが、ガラスにはハンダが乗らないので、ガラスとガラスの間に銅のテープを巻きます。その上にハンダを乗せていくんです。そのテープを巻く道具と、ガラスカッター。これでガラスに線をつけて、割っていくんです。ガラスは熱に弱いので、テープの上にだけ乗せないと割れてしまいます。波の模様は波模様のテープがあるのでそれを使います。丸いものなどは自分でその形にテープを切って、その上にハンダを乗せています。」

—とても精巧な技が必要なんですね。ところで、伊東さんがここでお店を始められたきっかけは何だったのでしょうか。

「もともと私は南箕輪の出身です。家の近くの共同アトリエで制作を始めていましたが、ステンドグラスの制作とお店と、両方が一緒になった場所をやりたいという思いがあって。でもイメージにあう場所がなかなか見つからなかったんです。諏訪が好きでよく遊びに来ているうちに、友達の紹介でこの場所に出会って、2010年の12月にオープンしました。お店の主力商品はステンドグラスですが、その他にも「贈り物にまつわるもの」を扱っていこうということで、メッセージカードとかお手紙を書くためのものなどを置いています。」

お店の一角には、メッセージカードやプレゼント用の小物などが並ぶコーナーが。

「ステンドグラスを作っていると、それが買われていくきっかけが、結婚式のウェルカムボードだったり、お祝いのためのプレゼントだったり…「誰かにあげるもの」なんです。なので自然と自分のステンドグラスと一緒に、誰かにあげるもの、プレゼントにまつわるものを一緒に置くようになりました。贈り物としてもらったら嬉しいかな、プレゼントにこれが添えられていたら嬉しいかな、というものを選んで置いています。」

ちょっとした贈り物にぴったりのかわいらしいブローチやストラップなども並びます。

「自分のものを選んでいるのも素敵なんですけど、誰かにあげるためにそれを選んでいる姿を見ると、何だかとても幸せになるというか、いい光景だな、と。自分の物を選んでいる時って、自分がそれを好きか・嫌いかで選ぶんですけど、人の物を選ぶ時はそれが違うから…こういうものってどうですかね?と相談されることが多いんですね。

私は仕事として「人と接すること」を無しにはできなかったので、お店をやるというのが前提としてありました。その中で人と話ができたりというと、オリジナルでオーダーものを作るとか、一緒にお客さんと選ぶとか…。もちろん自分のものを買いに来ていただいてもいいんですけどね(笑)。」

ステンドグラスのブローチはガラスの美しさを味わえます。

「こういう店なんで、男性の方は入りづらいかなと思っていたんですが、意外と男性一人でいらっしゃる方も多くて。やっぱりプレゼントを選びきれないみたいなんですよね。その姿が、なんかいいなあと思って。」

—でもなかなかそうやって贈り物の相談ができる所って無いですよね。

「大きい雑貨屋さんなどでは相談するという雰囲気でもないですしね。それでも私自身は例えばお店に行ったときに、あんまり店員さんに話しかけてほしくないっていうのもあるし、そういう人はたくさんいることも分かっていて。ただ相談しやすい雰囲気は作りたいから、そのどっちでもいけるように、というところは気にはしながらやっています。」

ガラスのトレーやキャンドルホルダー。どれもシンプルでありながら味わいのあるものばかり。

 

—伊東さんは作家であり、お店のオーナーであり、売り子さんでもあるわけですが、作品の制作とお店の運営の両方をしたいというのにはどのような思いがあるのでしょうか。

「手作りだからって(作品が)あんまり特別なものになりすぎたくないという思いがあるんです。作家ものが好きな人もいますが、そういうんじゃなくて、手作りのものが当たり前になる世の中になっていったらいいな、と思っているんです。毎日使うものを量販店で買うのが当たり前というんじゃなくて。だから手作りだからってあんまり高くはしたくないし、安いものを買って一時期だけ使って捨ててしまうのではなく、高くても長く使えるものを選んで買ってほしいなと思います。作家ものというとハードルが高く感じてしまう人が多いので、なるべく普通に、そういう色は出したくない。なので私も作家ということはあまり表に出さずにやっていきたいと思っています。作家性は出さずに、ものだけでやっていけたらいいな、と。」

—作家さん=売り子さんだと、お客さんにびっくりされませんか?

「オーダーできるんですか?と言われて、はいはいと説明をし始めると、あれ?店員さんが作るんですか?!ということもありました。そういう気軽な感じでできればいいなと思っています。だから私のは「作品」じゃなくて「商品」だと考えています。」

店内に並ぶ数々の作品は、この手から生み出されます。

 

—伊東さんはとてもポジティブにお客さんの意向を汲んでいらっしゃるんじゃないでしょうか。作家さんの中には、お客さんの希望に迎合するのを良しとしない方もいると思いますが…

「見るのは好きだし、そういう作家さん自身の個性が強く出た作品も好きです。でも私は自分の作ったものを使ってもらえるのが嬉しいし、作ることというよりは売る側にいたいというのがあるので、自分がこういうものを作りたい、と思うことよりも、お客さんの要望を聞いて、それを提供するということの方が優先されるというか。作風という意味ではたぶんそういう作家の個性はあまりないと思うし、出していないつもりです。どちらかというと私が自分で使いたいもの、あったら欲しいなというものを作るようにしているので、あんまりそういう意味でのこだわりで作ったものは無いかもしれません。」

—いえいえ、主張しすぎない雰囲気にこそ、伊東さんの人柄が現れているように感じます。他に制作するにあたって心がけていることはありますか?

「作るときはただひたすら作るだけなんですが、デザインを決めるときには、お客さんのオーダーも聞きつつ、出来るだけ長く使ってもらえるように考えています。例えばウェルカムボードだと、結婚式当日は大きい方が目立って良いんですけど、家でそれを置くことを考えると、そこまで大きいものを置くのは難しい家も多いですよね。その日限りのものにはならないように、後々使うこととか長く使う目線をご提案の中に入れるようにしています。」

結婚式のウェルカムボード。式の後にも生活の中に溶け込んでいる様子が目に浮かぶよう。

 —ガラスの「持ち込み」のようなこともできるんですか?

「家を立て替える時に、前の家のガラスを形を変えて次の家に残したいと言って、窓に使われていたものをランプシェードにしたこともありました。たとえば結婚式と家を新築するというタイミングが重なるときには、そのガラスを使ってウェルカムボードに、と作り替える方もいらっしゃいましたね。

海外の家だと、ステンドが自然にとけ込むと思うのですが、日本だと和室がある家だとか、日本の家に合うように、古材のガラスも使っています。昔のおばあちゃんの家にあるようなガラスをステンド用のガラスと混ぜて…そうすると割となじみやすいんです。あのランプシェードも全部古材で作ったものです。」

古材の型ガラスを使ったランプシェード。型ガラスはステンド用のガラスよりも薄く繊細なのだそう。

「古材の型ガラスは、家屋の解体のときに譲ってもらったりすることが多いです。近所で古い建物を壊すから、古いガラスとかたぶん出るよって商店街の方に言われて、見に行って。これは本当はガラスだけもらってくるつもりだったんですけど、建具がすごく素敵ですよね。このままガラスだけ抜いて捨てられちゃうのはもったいないなと思って、そのままにしてあります。欄間の上にはまっていたものです。上に厚いガラスを置いてテーブルとかにできたらいいなと思っているんです。」

細かい細工が施された建具。綺麗なテーブルとして生まれ変わるといいですね。

「この家屋の解体を教えてくれた、同じ商店街のすてっぷカサイさんは、ここに来るとガラスの話をしてくれたりとか、そういった古いガラスの出そうなところがあるとか、そういう情報を教えてもらえる、声をかけてもらえるんです。」

—それもここにお店を構えているからこそですね。

「人があったかいのはすごく感じています。私、諏訪に来る前に伊那にたまたま諏訪出身の友達がいて、「諏訪の方は結構人がさっぱりしているから、けっこう怖いと思うよ」と言われて、ちょっとドキドキして来たんですけど、でも全然そんなことはなくって、私には合っているように思います。私の地元では、若い人が何かするということに興味を持たない人が多かったというか、たとえば物件を探していても、「まあそんなことやったって」「やっていけるの?」みたいな。そこでもう閉ざされちゃって、全然そこから進まなくて。でもこっちに来た時に、本当にすぐ近いところまで入れてくれたというか、そういう大人の人もいるんだ、と。いろいろ気にかけてもらったりして、ありがたいですね。」

 

さて、店内で気になるものを幾つか見つけました。wawaでは様々なイベントや楽しい試みも行われています。ここでその中の幾つかをご紹介しましょう!

 

1.今月のガラス、万華鏡、かけらすくい

万華鏡は「今月のガラス」を使ってその月をイメージして作られます。

「毎月《今月のガラス》というひとつの素材を決めて、それで新作を作っています。この万華鏡はそのかけらを使ってつくったものです。筒に巻いている端切れは、同じ御田町商店街のすみれ洋裁店さんで選んできて。 」

—ああ~、これ9月って感じ!こっちはすっごい8月って感じです!これはぜひお店でのぞいてみて欲しいですね!

「欠片すくい」は、やはり制作で出たガラスの欠片をすくい、小瓶にに詰めて持ち帰れるというもの。宝探しのようなわくわくを味わえます。

 

2.年賀状、暑中見舞い展

「贈り物にまつわるもの、というお店のコンセプトから、一年で一番はじめの贈り物の展示をやりたいと思ってはじめました。私のところに送られてくる年賀状がとても素敵で、このまましまい込むのはもったいないと、はじめは自分でもらった年賀状を展示したのですが、素敵な年賀状がほかにもありそうだなと思って募集してみることにしました。年賀状と暑中見舞い展をそれぞれ1回ずつ開催して、次回も開催する予定です。年賀状って年々減っているようですが、私としては結構好きなイベントです。もっと年賀状を書くこと、贈り物をすることが好きになったらうれしいなと思って。これできそう・自分だったらこうやれそう、といった発想のきっかけになったり、工夫次第でできるんだって思ってもらえれば嬉しいです。」

—次回は年賀状展ですね。年賀状って、自分に宛名を書いて送ってくれたものだということがまずとても嬉しいですよね。どんな作品が集まるのか楽しみにしています!

 

3.ガラスのギフト券?!

お店の一角には素敵にラッピングされたガラス板のコーナーがあります。

「こういう贈り物のお店なので、ギフト券はずっと作りたくていたんです。中には9cm角のガラスの板がはいっていて、それを千円で購入していただいて、どなたかにプレゼントとすると、もらった方はそれで何か作るときに千円引きでお作りできるというものです。」

—実物(ガラス板)が入ったギフト券ってあんまり無いですね。しかもガラス板を選んであげるっていうところで送り主のチョイスもちょっと入るという。画期的なギフト券ですね!

「ガラス好きの人に何かあげたいけど、何がほしいかわからない、というご相談が多くて。じゃあもらう人がどんな商品にするかは選べたらいいかなと思って。これだったらそのまま飾ってもきれいだし、コースター、花瓶敷き、鏡の飾りなど、何にでも使っていただけますよ。」

 

4.キャンドルナイト

店内には伊東さんセレクトのキャンドルも。

「これは自分がやりたくてやってるだけなんですけど(笑)。春分の日、夏至、秋分の日、冬至の年に4回やっています。お店の中で電気を消して営業して、その雰囲気を楽しんでいます。ちょうど一年の中で一番日が長い日、短い日、同じ日。普段は時間を感じることなく過ぎていくけれども、ろうそくの光は時間の流れを感じられるし、終わった後に電気をつけるのが不思議な感じになる。炎のゆらぎにリラックス効果があるんだと思います。とても気持ちがいい時間ですよ。変に「節電」というのではなくて、こういう生活が楽しいって思えたら、それはそれでいいことだなと思っています。」

 

ガラスエッチングという技法で模様をつけたガラスを使ったキャンドルホルダー。

 

—最後に、伊東さんにとって、諏訪ってどんなところでしょう?

「楽しいですね。諏訪は好きです。火を見るのもなんですけど、水を見るのも好きなので、諏訪湖があるのはすごく嬉しい。すごくいい距離に、いい場所があるな、と。いろいろがちょうどいいと感じています。大きさとか。」

 

気がつくともう夕暮れ時。店内の白い壁は、ガラスを透した様々な色に彩られていました。

手作りのものを大切に使うという当たり前のことを、日々制作される作品を通して地道に発信しようとしている——そんな伊東さんの姿勢にとても感動したスワッシュメンバーのふたりでした。

伊東さんとお客さんとのやりとりの中で形作られたステンドグラスは、日常が特別に育っていくのを見守ってくれているのでしょう。毎日の暮らしに溶け込む、当たり前のようでちょっと特別なもの。そんな素敵なものが見つかるお店でした。

★現在松本市の元町カフェにて伊東さんの展示「12月のブローチ展」(2013年12月5日〜12月26日)が開催されています。下諏訪のwawaとともに、ぜひ見に行ってみてくださいね!

http://motomachicafe.naganoblog.jp/e1400449.html

wawa

〒393-0075

諏訪郡下諏訪町中央通319

Tel :0266-75-2505

営業時間:12:00~18:00

定休日:水曜日・第2&第4木曜日

http://wawa.petit.cc/grape1/

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